冥土 in JAPAN
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「人を殺した事の無い軍用銃」というものはあるのでしょうか。
実は、それがこの日本に存在します。


中でも日本初のアサルトライフルとして誕生し、
軍事書籍の世界的権威「ジェーン年鑑(Infantry weapons)」において「very good weapon」
評された「六四式小銃」は大変有名です。


今回は、日本が世界に誇るアサルトライフル「ろくよんしき」をご紹介します。

■プロジェクトX ~国産小銃で日本を守れ~
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(↑「三八式歩兵銃」 大日本帝国を支えた主力小銃)

今から約半世紀前、終戦を迎え、武装解除されてしまった日本に
「警察予備隊」なる自衛隊の前身が発足します。
国内の治安維持組織というお題目を掲げてはいるものの、彼らはれっきとした軍隊でした。
軍隊である以上、強力な「小銃」が必要だったのですが、
当時の日本には新たに小銃を調達する余力は無く、そこではかつての帝国陸軍で酷使され、
ボロボロとなった「三八式歩兵銃」「九九式歩兵銃」や、米軍から貸与された中古銃が
急場しのぎで使用されていました。
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(↑M1918A2「B.A.R.」 米軍から貸与された大型の自動小銃)

ボロボロになった銃は暴発の危険もあり、とても実用出来る代物ではありませんでしたし、
米軍から貸与された中古銃はどれも大きく、日本人の小柄な体格には不向きでした。


そして一番の危険は、きたる有事の際に使える「自動小銃」が一丁も無いという現実です。
というのも、当時の日本はソ連侵攻の脅威にさらされていました。
地理的にアメリカとソ連の板ばさみとなっている日本が戦場となった時、
自国の防衛すらままならない状況に陥る事は誰の目から見ても明らかでした。
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(↑「M14」 当時の米軍制式採用自動小銃)

そんな最中、日本が恐れていた通告がアメリカから寄せられます。

「アメリカ国内で余剰となっているM14を、日本の自衛隊で採用して欲しい」

とんでもない話です。
またの機会にお話しますが、M14は当時「アサルトライフルの失敗作」として西側各国から
腫れ物扱いされていたガラクタだったのです。

こうして、「余ったから買ってくれ」というアメリカからの無茶な要求をつき返すべく、
日本国内において新型の純国産自動小銃を開発する事になりました。
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(↑「六四式小銃」 日本初の純国産アサルトライフル)

開発は困難を極め、本当にあともう少しでM14を採用する一歩手前までいく所でしたが、
紆余曲折を経て、なんとか1964年に完成の運びとなりました。
その後、六四式は順次各方面隊へ配備が進み、現在でも使用される息の長い自動小銃となります。


■トロい小銃

今まで自動小銃の開発経験が無いに等しかった日本が開発した自動小銃は
いくつかの長所と、いくつかの短所を抱えています。

まず、長所は「ある程度、実用的なフルオート射撃が可能である事」です。

当時、各国のアサルトライフルは強力な弾薬を使用する関係上、どれも実用的とは程遠い
フルオート射撃しか行えませんでした。
中にはフルオート機能そのものを取り払ってしまったアサルトライフルも存在します。
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(↑「FAL」 採用国のほとんどがフルオート機構をキャンセルした)
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(↑「M14」 曲銃床により反動のコントロールが困難だった)


こうした中、六四式は内部構造の作動時間を長くする事で、
フルオートの連射速度を落とし、銃がなるべく暴れないようにしています。


(同世代アサルトライフルの連射速度)

FAL(フルオート搭載モデル) → 600~700発毎分
G3 → 800発毎分
M14 → 700発毎分

六四式 → 500発毎分


要するに、他の自動小銃に比べて動きがトロい、と考えて頂いて結構です
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■国産の価値

普段使っているもの、例えば車だったり、電化製品だったり、趣味の品だったり、
そういった物に「日本製」と書いてあるのとないのとでは、大きな差がありますよね。
それは国産という信頼・安心感の他に、「自国への愛着」という、愛国心の一種が誰しも存在するからです。


六四式の採用当時、何故あのような苦労を強いてまで、「純国産」にこだわったのか、


六四式は、国防の最前線に立つからこそ、その価値があるのです。
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by clan-aaa | 2009-05-19 07:00 | 「小銃少女」 | Comments(11)
Commented by あああ at 2009-07-02 00:49 x
64式は不審船事件とかで使用されてますが本当に人を殺した事が無いんでしょうか?^^;
Commented by clan-aaa at 2009-07-02 01:22
あああさん、コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、玄海灘沖での不審船事件では六四式が威嚇発砲に
使用されたと言われています。
そして、その後不審船は自爆もしくは火気系統への引火によって
沈没したとされているので、結果的に六四式の銃弾で
乗員を死傷させた、と解釈する事も可能だと思います。

ですが、小銃による戦果の計測は、慣例的に銃弾による致命傷を
確認する事で成立する、とされているので、前例の場合、
はっきりと六四式から放たれた銃弾で死傷させたと解するには難しく、
またこれ以外で死傷者を出した事件に六四式が使用されたという
記録が残っていなので、本文中では「人を(直接)殺した事の無い」という
表現を用いさせて頂きました。

ですので、正確にははっきりとしたシロではなく、限りなくシロに近いグレー、
という見解が正しいかもしれません。


ご指摘ありがとうございました。
また何かご不明な点がありましたらお気軽にコメントをお寄せ下さい。
これからもよろしくお願いします。
Commented by 彩雲 at 2009-08-10 01:00 x
九州南西海域工作船事件で初の実戦を経験した64式小銃の件ですが、この事件では巡視船「あまみ」に搭載されている64式小銃が1発のみ、工作船に向けて発射されました。
その後は巡視船「いなさ」に搭載されている20ミリ機関砲が工作船に向けて発射されています。機関砲には炸薬が充填されていませんので、機関砲のせいで工作船が爆発したということはありえません。
工作船はその直後に自爆用のTNT爆薬の爆破によって船底と船橋が吹き飛んで轟沈しています。

http://www.youtube.com/watch?v=CxU_FtAjQx0
Commented by clan-aaa at 2009-08-11 06:59
彩雲様、詳しい解説ありがとうございます。
1発のみというのは意外でした。
これで六四式が自分の中でよりシロに近づきました。

それと20ミリ機関砲、こちらも装薬無しというのが驚きでした。
ボール弾+曳光弾ということになるのでしょうか。
諸外国の海上警備艇との装備と比較してみたい所です。
Commented by 彩雲 at 2009-09-10 00:52 x
>これで六四式が自分の中でよりシロに近づきました。
発射されたのは1発ですが、あのときの「あまみ」では、銃撃戦に備えて腕利きの小銃手をあらかじめ船橋に配置し、射撃させましたので、64式は敵工作員を倒しているかもしれません。海保には、64式のシロを証明してほしいと願っています。

>ボール弾+曳光弾ということになるのでしょうか。
海保では曳光弾を使う割合はかなり高く、私は映像から見て工作船事件では全部が曳光弾だと推測しています。炸薬入りでは不必要な危害を与えかねませんし、ボール弾では弾道が見えないので威嚇射撃の役に立たないでしょうから。過去に私が巡視船「きりしま」を見学した際、曳光弾のみで構成された100発入りの弾薬ベルトを入れる保管箱をみたことがあります。
Commented by clan-aaa at 2009-09-10 07:19
>彩雲様

実際にご覧になった上でのご意見という事で、大変為になります。
全て曳光弾となると、海保は攻撃性をほぼ無視して装備調達している
という印象を受けました。
艦載機関砲に疎いので断言できないのですが、
このような常備武装は世界的にも稀なのではないでしょうか。

貴重なコメントありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
Commented by 彩雲 at 2009-09-12 02:13 x
これからもよろしくおねがいします。

>海保は攻撃性をほぼ無視して装備調達している
そのようです。しかし威嚇というのはせいぜいヤクザやスネークヘッド程度には有効でも、北朝鮮の特殊任務部隊には効果がないですね。やつらは非常に凶悪な戦闘能力を持っているので、絶対に洋上で完全殲滅せねばならない。なのに、攻撃力が削がれている現状は不安ですね。

【Training to prepare for a guerrilla】
北朝鮮の遊撃隊に対処するための自衛隊普通科の教育ビデオがyoutubeにあります。ぜひご覧になってください。
Commented by clan-aaa at 2009-09-14 16:13
>彩雲様

動画拝見させていただきました。
ハンドガンに装着してあるのはブランクアダプターでしょうか、非常に珍しいタイプのもので興味深かったです。
近接戦闘が非常に優れているだけに、銃火器の扱いや、
また銃火器に対する特殊な風土がそれを阻害しているようで
なんとももったいない気がします。

貴重な動画を紹介していただきありがとうございました。
Commented by 名無し1曹 at 2011-01-23 21:37 x
89式についてはいつか取り上げる予定とかはあるのでしょうか?
Commented by 7743 at 2013-12-06 11:34 x
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%93%E7%B7%B4%E8%87%AA%E8%A1%9B%E5%AE%98%E5%B0%8F%E9%8A%83%E4%B9%B1%E5%B0%84%E4%BA%8B%E4%BB%B6

64式小銃による殺傷事例(戦闘でなく事件ですが)は既に発生していますよ。
2009年の記事にいまさらですが、どなたも指摘していらっしゃらないようですので。
Commented by clan-aaa at 2013-12-06 16:02
>7743 様

貴重なご意見誠にありがとうございます。
六四式の「軍用銃」としての清廉なイメージを語る上で、
一番の使用者である自衛隊という組織そのものが国際法上の大規模な
戦闘状態に陥ったケースが存在しない、という見方から
あえて殺傷経験を控えた表現を当ブログでは多用しております。
7743様の仰るとおり、事件事故等を含め厳密に言えば
決して血を見た事がない銃ではないというご意見には私も同感致します。

ご指摘誠にありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
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