ライフルのひみつ -M16編-
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前回取り上げた「ローラーロッキング機構」の中で、
ガスオペレーションシステムの簡単な原理について触れました。


今回は、数多く存在する自動小銃のほとんどが作動機構として採用している
「ガスオペレーション・システム」と、その派系型であり、M16が採用している
「ダイレクト・インピンジメントシステム」についてのお話です。


■ガスオペレーションの基本
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まずは、前回触れた内容について今一度確認していきたいと思います。

まず第一に、連続的な射撃をする為には、弾薬をバレルへと装填し、また装填後は「ふた」の役割を果たす
「ボルト」(上図緑)を何らかの方法で動かさなければなりません。
この、「何らかの方法」というのが、今回取り上げる内容、すなわち「作動機構」の事です。

ガスオペレーションシステムは、銃のバレルに小さな「穴」(=ガスポート)を開け、
そこから凄まじい勢いで噴出する弾薬の燃焼ガスの圧力を利用します。

その穴から導入された燃焼ガスは、「ガスチューブ」という導管を通してボルトにその圧力を伝えます。
ガス圧が伝わったボルトは、その勢いで後退し、薬莢を引き抜きます。

この一連の動作が、ガスオペレーションシステムの基本原理です。


この作動機構の特徴は

・安定した作動が見込める点
・内部構造が簡素に出来る点
・機関部が汚れにくい点


において有利な反面、

・ボルトが銃身と密接な状態で暴れる為、命中精度が落ちてしまう点
・ガスの圧力によっては、ボルトの後退不良によって作動性能が低下してしまう点


があげられます。


しかし、ガスオペレーションシステムを採用していながらも、
「機関部が汚れやすく、命中精度が高い」という、対照的な性能を持つ自動小銃が存在します。
それが、アメリカ軍が40年の長きに渡り採用を続けている「M16」です。


■M16のひみつ
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(↑ M16に見る「Direct impingement system」の概要図)

特に日本では、M16の作動機構の事を「リュングマン・システム」
開発者の名を冠し称する事が多いのですが、ここではその構造的な特徴から、
そしてアメリカ本国において一般的な
「ダイレクト・インピンジメント・システム」という呼称をあえて使用します。

ダイレクト(Direct)は「直接」、インピンジメント(Impingement)は「衝突する」という意味からも
わかるように、この作動方式はガスの圧力を直接的に利用してボルトを作動させます。


先に述べたガスオペレーションシステムと同じではないか、と思われたかもしれません。
下図は、上がAKやFALが採用する一般的なガスオペレーションシステム、
下がM16の採用するダイレクト・インピンジメントシステムの概要をあらわしたイラストです。
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両者の違いは、「ガスチューブとボルトがどのように絡んでいるのか」という点です。
ガスチューブとは、先に述べたようにバレルからガスを引導するために枝分かれした
導管の事を指します。

上のガスオペレーションシステムでは、ボルトから伸びた「棒」が、
ガスチューブの中に収まり、この「棒」にガスが直接当たります。

下のダイレクトインピンジメントでは、ボルトから「棒」は伸びておらず、
その為に細くなったガスチューブがボルトへ直接突き刺さるような位置関係になっています。

この、「ボルトから伸びた棒があるかないか」が両者の決定的な違いです。
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上図は、ダイレクトインピンジメントが作動する一連の様子を表したイラストです。
上は、弾薬が撃発され、弾頭がバレルを通過、
燃焼ガスがバレルに開けられたガスポートへと導入された直後の様子です。
下は、弾頭が飛翔後、導入されたガス圧がボルトへ伝わり、ボルトが後退していく過程を表しています。

下のボルト後退中の過程について、一般的なガスオペレーションシステムと比較すると
その違いが明らかになります。
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上が一般的なガスオペレーション、下がダイレクト・インピンジメントです。
両者とも、ボルトはこれ以上後退しない状態を表しています。

ガスチューブ内にある燃焼ガスが、ボルトから伸びた「棒」によって栓をされている状態の
ガスオペレーションシステムに比べ、ダイレクトインピンジメントでは、ガスチューブ内の
燃焼ガスが銃本体内部へと直接吹き付ける形となっています。

もうお気づきかと思いますが、前者の場合、燃焼ガスが銃本体内部へ侵入しにくいのに対し、
後者の場合は、直接「中へ出してしまう」為に汚れやすい構造となっています。
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この「燃焼ガスによる汚れ」は、銃の作動性能を妨げる最大原因となります。
ベトナム戦争では、このようにM16が汚れやすいという特徴を持っている事を知らない兵士が、
燃焼ガスの不純物が多く汚れやすい弾薬を使用してしまった為に、戦闘中に故障を頻発し、
弾は入っていながらも動かなくなったM16を抱えたまま戦死する兵士が続出しました。

しかし、このような短所を抱える反面、ボルトから伸びた棒が暴れる事が無く、
バレルへのストレスが低い為、M16は世界中の軍用銃の中でもトップクラスの命中精度を誇ります。

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個人的な意見としては、兵士教育が手厚く、その錬度も高いアメリカ軍だからこそ
このような特殊性を持つ自動小銃を主力ライフルとして運用できるのだと思います。
逆に、兵士の精度が期待できない途上国の軍隊や、兵役義務のある国々、また自衛隊のような軍隊には
全く適さない銃です。これは兵士への期待度と、資金的な問題が関係しています。


銃の構造、性能を紐解くと、このように軍隊そのものの性格や実情が見えてくる点も
銃器研究の面白さと言えます。
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by clan-aaa | 2009-06-09 07:00 | 「小銃少女」 | Comments(0)
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