四式小銃の怪
唐突ですが、去る7月22日、アニメーターの金田伊功氏がお亡くなりになったそうです。
アニメを語る上で氏の残した功績はあまりにも大きいと思います。
かの近藤喜文さんも若くしてお亡くなりになったように、アニメーターという仕事は
自分の命を削ってアニメに命を吹き込む大変な職業であるのだなと思います。
ご冥福をお祈りします。


さて、話変わって先日「BattleField1943」がコンシューマー機にてリリースとなりました。
同シリーズの最新作という事で大変な人気を博しているそうですが、その中の一陣営として
旧帝国陸軍が登場します。
実際にプレイした方から感想などを聞いたところ、なんでも
「日本軍がセミオートの銃を持っている」との事。

旧軍が採用していた主力小銃の中に、セミオートは存在しないはず。。。。
と気になって調べてみた所、なんとその正体は
「Type 5 Rifle = 四式小銃」という事が判明しました。
まさかこんなものを持ってくるとは、ちょっと驚きでした。


まずこの銃を語る前に、ある誤解について説明せねばなりません。
この誤解は、世界的に広まってしまったものであり、せめて当ブログ読者の皆様だけは
正確な情報を理解して頂き、また非常に情報が少ない同銃に関する一情報源として自負するくらいの
覚悟で今回の記事を仕上げていこうと思います。
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(↑ 「試作四式小銃」 都野瀬光男著「幻の自動小銃」より)

旧軍では、数々の試作小銃、特に主力小銃のオートマチック化を主軸とした開発が行われていました。
その当時、各国軍隊も同様の開発を行い、来るべき「オートマチック戦争」に備えていたのですが、
セミオート化による弾薬消費量の増大による物資枯渇の危惧、
また旧陸軍における銃剣突撃等に見られる「精神力万能主義」が蔓延っていた為、
主力小銃のオートマチック化という安易な火力増強に対して理解が得られなかった背景がありました。


しかし旧海軍では自動小銃のオートマチック化の必要性を感じており、その開発を陸軍へ打診
(その当時の小火器開発は全て陸軍兵器局が掌握していた為)したのですが、
前述の理由により拒絶されてしまいました。

そこで旧海軍は兵器局での開発を諦め、同軍軍需指定工場であった愛知の民間企業ワシノ製機に対して
米軍からの押収兵器「M1ガーランド」を参考にしたオートマチック小銃の試作を命じます。
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(↑ 「四式小銃製図」 戦後豊和工業によって再調査されたもの)

こうして完成したのが「四式小銃」です。
当初250丁程度が製造されたのですが、ガーランドで使用するM1実包の弱装仕様ともいえる
九九式実包では作動面に難があり、特にボルトアッセンブリーの後退不良による排莢不良が絶えず、
ワシノ製機は旧海軍に対して設計変更を求めましたが、その許可が下りる前に終戦を迎えてしまいました。


こうして試作止まりに終わった四式小銃は、その後米軍に押収され、調査される事になります。
この時、米軍の調査書に「Type 5 Rifle」と誤った名称が記されてしまった事が、誤解の発端です。


時は流れ60年代初頭、日本国内で自衛隊が使用する自動小銃の開発が開始されます(六四式小銃)。
開発を担当した豊和工業は、様々な自動小銃を調査・参考としたのですが、その際にあの四式小銃も
調査の対象となりました。
その際に用いられたのは、かつての米軍調査書。
誤った名称が記載されているにも関わらず、そのまま「Type 5 = 五式小銃」として
翻訳された同銃は実在数も少なく、情報に乏しい為、アメリカだけでなく、本国日本においても
誤解が広まり、定着し、現在に至ります。


紆余曲折を経た今、ようやくバトルフィールドにて日の目を見たにもかかわらず、
試作四式小銃は、間違った名称で呼ばれ続けているのです。


その誤解が解けるのは、いつになるのでしょうか。
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by clan-aaa | 2009-07-23 21:00 | ミリタリー | Comments(5)
Commented by 007 at 2009-07-24 03:13 x
こんにちわ。いつも貴サイト更新楽しみに見ております。
やはりこのこの銃の名称の誤りは銃自体がマイナーだと言うのが要因ではないでしょうか?銃とは違い戦車になりますが、同じく戦後米軍に調査されてた四式戦車はTYPE5と米軍が誤った認識で調査の写真が撮られている写真がありますが、今では四式と五式戦車の区別は容易ですし誤りも見受けられません。

今回の件は当方も前から疑問に思っていた事柄だったので分かりやすく書かれていて大変ためになりました。

Commented by clan-aaa at 2009-07-24 14:24
いつもご覧頂きありがとうございます。

>やはりこのこの銃の名称の誤りは銃自体がマイナーだと言うのが要因ではないでしょうか?

その通りだと思います。
試作銃は数多く存在しますが、特に四式は民間企業での試作開発が
行われていた特殊なケースの為、当時の米軍調査部も特定するに足る資料が
乏しかったのではないかと思います。


>同じく戦後米軍に調査されてた四式戦車はTYPE5と
>米軍が誤った認識で調査の写真が撮られている写真がありますが、
>今では四式と五式戦車の区別は容易ですし誤りも見受けられません。

興味深いお話です。
しかも同様の間違いである、というのがかなり引っかかります。

貴重なコメントありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
Commented by 007 at 2009-07-25 03:44 x
丁寧なレスありがとうございます。
マイナーと言う言葉が乱暴でしたね。申し訳ありません。
良く見てみると上田信の日本軍の小銃のページでも五式小銃とイラスト付きで紹介されていました。F2戦闘機が使えない戦闘機と一般に信じられてるとの同じでこれを払拭するには大変かも知れませんねぇ・・・

>興味深いお話です。
しかも同様の間違いである、というのがかなり引っかかります。

 言われてみれば私もそうだと気が付きました。私の私見ですが、米軍は自軍を苦しめた兵器については良く調べているのですがその他はどうでも良かったのかも知れません。例としてご存知とは思いますがMG42はコピーまで作られ実際に使われたかも知れないほど詳細に研究されていますが東部戦線に優先的に廻されたMP44には余り遭遇してないのもあり名称こそ与えていますがレポートは少なめです。日本軍にしても戦闘機は試作機まで詳細に飛行テスト行って調べていますが、陸上兵器に関しては余り顛末やデーターなど現代でも聞きませんしそう言った経緯ではと思っておりますが、どうなんでしょうねぇ・・・・
Commented by clan-aaa at 2009-07-25 22:40
コメントを拝見する限り、同分野にかぎらず幅広い造詣をお持ちの方のようで
007様のような深い読者に意見を頂けるブログの書き手としては非常に恐縮です。。。

>東部戦線に優先的に廻されたMP44には余り遭遇してないのもあり
>名称こそ与えていますがレポートは少なめです。

後のM14の失敗につながる米軍の怠惰ですね。
さすが世界一の資本主義国家ということもあって、効率・非効率、
もしくは有益・無益の二択で物事を分別する国民性も関係しているかと
思います。おっしゃるように自身が苦しめられた兵器は陸戦空戦兵器問わず
綿密な調査がなされていますね。
しかも当時の米軍調査部が直々に作成した一級資料、というのも
事態を複雑化させているかもしれません。
日本国内に確固たる資料が残っていればよかったのですが、
斯様な経緯ですので、残念な限りです。
Commented by 007 at 2009-07-26 23:57 x
引き続きコメント失礼致します。
幅広い造詣というか私の場合広く浅くなので驚くほど知識がありません。
銃の名称・由来・エピソードなど分かっていても肝心の構造など分かってないなどかなり偏った知識ばかり持ってる愚か者ですが、文章分かりやすく書かれており尚且つ造詣の深い貴サイトには毎度勉強させて頂いております。

私も個人的にはWWⅡのドイツ軍が高額を掛けて作成したと言われるステンガンのコピー銃とか情報少ない話などに興味あります。
また気になる記事ありましたらコメントさせて頂きたいと思います。


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