よみがえった分隊支援火器 「MINIMI」①
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ペリカンケースの中で1750(=MINIMI用1959)が一番長いと思っていたら
1770(57インチ!)なんてものがあるみたいです。ペアガン並べても余裕で入りますね。


さて、今回はMINIMIのお話というわけで、
まずは「分隊支援火器」の歴史から簡単に触れていきたいと思います。


■よみがえった分隊支援火器

軽機関銃という機関銃の部類の中に、「分隊支援火器」というカテゴリが存在します。
文字通り、軍において分隊(最小の作戦行動組織)単位で割り当てられる軽機関銃全般を指す言葉なのですが、
その由来をたどると、第一次世界大戦にまで遡ることになります。
マドセンM1902/03軽機関銃、通称「レキサー軽機」(マドセン機銃の輸入代行元の社名からきているので、
あまりよくない呼称だと思います)は、ショルダーレストと二脚を備え、
かつ軽量で個人運用が可能という、現在の分隊支援火器の条件をほぼ備えた、
当時多くの国々で採用されていた名機関銃でした。


これに目をつけたのが当時の米軍であり、マドセンM1902軽機と同様に、ショルダーレストと二脚を装備し、
二十発のマガジン給弾ながらも強力な火力支援が可能であった、ブローニングM1918、通称「BAR」
採用していた事は、映画やゲームを通してご存じの方も多いかと思います。


ここで注意したいのは、分隊支援火器はあくまでも制圧支援の「補助的支援火器」であり、
マドセンM1902軽機を採用していた国々が制圧火器の主軸に重機関銃をおいていたように、
BARを採用していた当時の米軍も、M1919機関銃を制圧支援火器の主軸に置いていました。


時代は流れベトナム戦争時、米軍は主力小銃をセレクティブ・ファイアが可能なM14に移行することで、
分隊全体の火力が増強、すなわち分隊支援火器はもはや不要との判断に至り、ロジスティック上の観点からも、
歩兵用火器をM14と、GPMGのM60の二本立てで統一する事にしました。


先の大戦では物量によって勝利を収めたものの、ライフル弾、カービン弾、拳銃弾を使用する
何種類もの銃火器体系を、なるべく簡素に統合させたいというのが、米軍の本音であったのでしょう。
こうして米軍の分隊は、M14を装備するライフルマンを中心に、M60を装備する機銃手を一人、
もしくは二人配備させる簡素な形となりました。


しかし、米軍はベトナム戦争でソ連の兵器体系と対峙した事によって、この方針の転換を余儀なくされます。


その当時、ソ連はAKを主軸とした分隊に、RPKやRPD軽機関銃を分隊支援火器として数丁配備し、
さらに一分隊につき一丁のPKM汎用機関銃で火力を増強し、米軍よりも複雑ながらも、
様々な戦況に対して臨機応変に対応出来る兵器体系を確立していたのです。


一方の米軍は、機関銃といえば長大で取り回しに不便なM60機関銃のみしかなく、
火力は十分ながらも、軽便さに欠けていました。
すなわち、軽快な運用が可能で、なおかつ火力に長けた支援火器、
―ライフルとGPMGの中間のような存在、が求められたのです。


この後に米軍のコンペを経て採用されたのが、ベルギーFN社のMINIMI軽機関銃でした。
Mini Mitrailleuse(仏「小型機関銃」)の名を持つこの軽機を米軍が採用したことは、
西側各国の兵器体系にも大きな影響を与えました。


こうして、現在では「汎用機関銃」と「分隊支援火器」の2種類が兵器体系における
主要な機関銃となっています。


■自衛隊とMINIMI

自衛隊では、先日ご紹介した62式機関銃のみを長い間GPMGとして採用し、
分隊支援火器は不在の状態が続いています。
しかし近年、自衛隊はMINIMIを5.56mm機関銃として62式の後継に当て、未だに自衛隊の分隊支援火器は
不在となっています。

MINIMIは、ある一点において絶対に62式に引けをとる点があるので、汎用機関銃としては
力不足なのです。
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(↑ 射程差異イメージ。色が重なる範囲において歩兵の前進が期待出来る事から、赤い範囲の重要性がわかる。)

MINIMIが使用する弾薬は、主力小銃である89式と同じ5.56mmNATO弾です。
精度の差異はあれども、両者の得意とする射程は同等で~400m程度となります。
62式が使用する弾薬は、減装ながらも強力な7.62mm弾なので、
得意とする射程は~600m程度となり、前者よりも分があります。

ところで機関銃は、小銃を持った歩兵を前進させるために、敵を威嚇制圧しながら
支援射撃を行うことが主要な役割です。
すなわち敵を狙って倒すというより、味方歩兵の前進を確保するべく、その火力で敵を圧倒するのですが、
歩兵が持つ小銃と同程度の射程では、問題が生じます。
支援射撃に有効な余剰分がないというのは、前進する歩兵にとって不安以外の何者でもありません。


ですので、MINIMIでは62式の後釜は務まらないのです。
はたしてこんな不安だらけの兵器体系で、いったい誰と戦おうとしているのか存じませんが、
最新鋭のイージス艦の隣に、70年代の西欧兵器体系の状態で止まっている
軍隊を備えている国は、間違いなく日本だけだと思います。
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次回は、MINIMIの特徴と、
分隊支援火器のこれからを取り上げたいと思います。
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by clan-aaa | 2009-12-12 17:00 | 「小銃少女」 | Comments(7)
Commented by たかさん at 2009-12-12 21:23 x
MINIMIって7.62mmのバージョンありましたよね?
それではなんとかならないんでしょうか?
Commented by clan-aaa at 2009-12-13 18:05
7.62mmMINIMIはより長距離かつ強力な支援が行えるようにとの要望から
開発された経緯があるのですが、これは部隊の末端レベルでGPMGの
持つ効果を期待しているともとれると思うので、務まらない事もないと
思うのですが、一番の懸念は銃身長です。
MINIMIの銃身長は40cmちょっとしかないのですが、GPMGは総じて
60cm程度の銃身長を持つものが多いので、低伸性にかなりの差が
出てくるんじゃないかなと思います。
Commented by くろと at 2009-12-14 00:34 x
日本の軍隊は、兵器と名のつく機械部品は一級品なのに対して、歩兵の装備は貧弱かつデリケートすぎます
未だにアサルトライフルが64式と89式ではもうすでに20年以上前の採用ってことになるんですよね?
自衛隊の人が言ってましたが、AKとかを輸入すべきだとかw
正直なところ、新規採用はコストと作動性を重視すべきだと思います
(命中精度なんて弾と扱いに気を付けたらなんとかなりそうですし)
Commented by clan-aaa at 2009-12-14 02:00
そういえば89式採用からもう20年も経つのですね。。。
先日89式の近代改修版が発表されていましたが、もっと他にやる事あるだろと
思わざるをえない現況なので、AKのジョークが満更でもないように思います。
Commented by tieren at 2009-12-14 03:23 x
不審者のFBI帽に何か意図を感じざるを得ませんw
それにしてもマドセンは良いですねえ、たしか機構はマルチーニ・ヘンリー(マルチーニ・エンフィールド)を自動化したものだったと聞いています。
20世紀初頭から中頃までの自動火器はどれも特色があって良いですね。
最近のディフェンスショーやショットショーのレポート見ると猫も杓子もクローンやレールゴテゴテばかりでゲップが出ます。
それにしても自衛隊の小火器の調達・更新問題は本当に深刻ですね、GPMG純減やカラシニコフによる代替だけは回避して頂きたいものです。
>くろと氏
カラシコフ云々の戯言は悪名高き仕分け人の発言では?
正直言って、正規のルートでのカラシコフの輸入はそれほど安くは上がらないと思います、大量購入とはいえダッラの密造品のようにはいかないでしょう。
また、制式化するとなれば輸入では済まないでしょう、ライセンスの取得や弾薬製造ラインや補修・製造ラインの整備などを考えれば89式とそれほど変わらなくと考えます。
集弾性に関しても構造や弾薬の性質上、簡単な方法では向上させることは出来ないでしょう。
それが出来ればAN94などは開発されることなど無いでしょうし。


Commented by clan-aaa at 2009-12-15 01:57
いやー先日官給キャップを買いまして^^
仰る通り最近の薄っぺらい新製品達には飽き飽きですね。
車なんかも同じ様な状況が言えるのではないかと思います。
Commented by marderhund at 2010-01-08 00:27 x
初めまして。marderhundです。

20世紀半ばまでの殺傷性能基準、人間の骨を貫通できるかどうかで言えば5.56mmは1000m程度まで貫通できる計算になりますし
米軍のFM上では二脚時の有効射程はポイントターゲット600m、エリアターゲット800mとM249とM60、M240では同じです。

ですが、殺傷性能では格段の差があるようで英軍ではこの間7.62mmのL129A1小銃が導入されましたが、500mから900mの交戦距離では
5.56mm弾では殺傷能力が不足することが理由の一つになっています。英軍ではL86かMINIMIが担当してきた距離です。

かつてのブリティッシュ.280の「パワー不足」に関してもNATO弾ではGPMGで使う場合を考慮して2000ヤード(約1800m)以上の有効射程が要求されて
いまして英軍の殺傷性能基準である60ftlbs(約80J)の倍以上の126ftlbs(170J)を達成しましたが米軍はそれでもパワーが足りないと却下したそうです。
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