よみがえった分隊支援火器 「MINIMI」②
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ところで先日、米軍のM16マガジンがアップデートされたようです。
注目すべきはマガジンフォロアーの形状で、緩やかな傾斜は廃されストレートなものに変更されています。
銃の性能の三分の一はマガジンで決まると思いますし、以前からHK社製のものを試験導入してみたりと
その腰の入れようは伝わるのですが、上記リンクにもあるようにリップの変形をゲージでいちいち測らねば
ならんような作りを見ると、この子はやっぱり神経質だなと改めて思います。


のっけから話が飛んでしまいました。。。
今回は、先日に引き続きMINIMIの構造的特徴と、
分隊支援火器のこれからに迫ります。


■兵士に一番近い機関銃

分隊支援火器はライフルマンと共に分隊を構成する存在であるために、
相互性や互換性が求められる特殊な機関銃です。
特にヨーロッパでは、自国小銃をそのまま大型化した「ライト・サポート・ウェポン」を
今でも多く使用しているのですが、マガジン給弾である以上、その火力に限界があることが
一番の欠点でした。

MINIMIが米軍採用に至ったのは、M16マガジンの給弾機構だけでなく、
ベルト給弾機構を併せ持っていた事がその決定打でありました。

この「ベルト&マガジン給弾併用機構」の元となったのは、チェコのVz52/57機関銃でした。
この画期的機関銃が1950年代に登場していながらも、注目されることが無かったのは、
その生まれが共産圏であった事の他に、その構造を最大限に生かすことが難しかったためです。


■MINIMIの本音

「あると便利」というのは、複雑なシステムを生む一番の原因です。
米軍はMINIMIを採用したことによって、同じ兵士でもMINIMIの操作法とM16の操作法を合わせて
教練する必要が生じてしまいました。これは軍にとっても兵士にとっても、大変な負担です。

冒頭でも述べたように、分隊支援火器はアサルトライフルとの相互性・互換性が求められます。
欧州のライト・サポート・ウェポンと違い、MINIMIはM16とマガジンを共有出来るだけで
本体構造・アッセンブリーは全くの別物です。
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(↑ 米軍教則本による分隊構成図。4人構成の1チームにつき1丁のSAW=MINIMIが配される)

米軍の教練本にMINIMI射手は「AR=Automatic Rifleman」と記されています。
ここに、SAW射手はあくまでもライフルマンの延長線上であるという、
米軍の認識が伺えるのですが、お国柄でもある「効率性重視」という観点を
大きく阻害していると感じているようにも思えます。

こうして、MINIMIの魅力と火力のバランスは、次第に覆るようになっていきます。


■分隊支援火器のこれから

つい先日の話ですので、年明けにも専門誌等で取り上げられるかと思いますが、
実は先日MINIMIの代替機関銃とされる、「IAR=Infantry Automatic Rifle」の海兵隊採用が決定されました。
これは米軍の主力小銃M16とほぼ同じ外観を持ち、操作性も共通化された、
いわばライトサポートウェポンの一種です。


製造元はドイツHK社で、コンペでは最終的にコルト案とFN案との競争になったのですが、
HK案のみクローズドボルトからの射撃が可能であった事が評価され、採用に至ったとの事です。
まだ詳細な外観や仕様が公表されていないのですが、おそらくはHK416を大型化させ、
MG36に似た新型ドラムマガジンを取り付けたものだと予想出来ます。


IARコンペの米軍担当者であるジェフリー准尉は、IAR採用の理由をこう述べています。

“IARは「本当の意味」で分隊の整合性を阻害する事なく、
SAW=MINIMIが持つ目的を果たすことが出来ます”



分隊支援火器としてMINIMIが米軍に採用され、脚光を浴びて二十数年が経ちました。
制圧支援を強力かつ柔軟にこなし、最も兵士に近い場所で戦場を支え続けたMINIMIでしたが、
ここにきて新たな転機が訪れてしまったようです。

しかし、ジェフリー准尉は但し書きとして、このような言葉を残しています。

“もちろん、我々はSAWを中隊の要として残すつもりです。
―作戦行動で必要となった場合に備えて、現時点では2000丁のIARと置き換えるだけに留まっています”

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MINIMIが分隊を支え続けるのは、これからもまだまだ続きそうです。


参考資料:Marine Times "Marines to test, evaluate 4 auto-rifle models"


私信ですが、今月はなかなか時間が作れず更新が停滞がちになっています。
不定期更新となり読者の皆様にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
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by clan-aaa | 2009-12-18 01:00 | 「小銃少女」 | Comments(3)
Commented by ロンリー at 2009-12-20 00:01 x
 豊和89式の弾倉はどうなるのでしょうね。弾倉の製造には、精度がいるそうですが、AKは、どうなのでしょうか。
 また、基本的な質問で恐縮なのですが、CzとVzの略号のちがいについてご教授下さらないでしょうか。
 MINIMIがネガティブな評価も持っていることを初めて知りました。また、分隊構成図で、分隊機銃の意味が分かりました。いつも、ハイクオリティーさに脱帽です。
 雪は大丈夫ですか?基本的なことをおたずねするかもしれませんが、今後とも、末永くよろしくお願い申し上げます。
Commented by くろと at 2009-12-20 04:13 x
めったに故障しないAKの故障というのはマガジンの給弾不良が原因だったりします
まぁ、それでもただ弾をまっすぐ押し上げられるならあとはボルトが上手く引っ掛けるかどうかだと思うんですが…
 
マガジンだろうがベルトだろうが同じ機構での給弾ができれば、機構を統一したマルチな銃ができるんでしょうけど
それぞれの銃にはそれぞれの役割があるのと同様に、一長一短な部分がありますから
100%統一しても結局どこかに綻びが出そうですね
 

寒くなりましたし、不定期更新でも構いませんのでお体にはお気をつけ下さい
Commented by clan-aaa at 2009-12-20 08:42
>ロンリーさん

めっきり寒くなりましたね。

89式の弾倉は横っ腹に穴が開いたちょっとおせっかいな作りになっているので
そのあたりから根本的に見直す必要があると私は思います。
そもそもマガジンは丈夫である事が一番に求められます。
AKですとマガジンリップのシートメタルを2回も折り曲げ強度を確保するなど
世界的に誉れ高い強固な作りになっていますが、1回しか折り曲げてない
中国の56式などがAK全体の評判を落としてるかもしれません。

CzとVzの違いですが、Czは社名でチェスカ・ゾブロヨフカの略称です。
Vzはチェコ軍採用モデルを表します。Vzor(=モデル、の意)の略称で
後ろの数字は採用年にあたります。
有名な軍用拳銃Cz75の場合は、輸出を念頭に製造されたため、
チェコと、社名をアピールすべくこのような名称になったとされます。


>くろとさん

お気遣いありがとうございます。
統一体系への挑戦、いわゆるシステムウェポンは冷戦期各国目下の課題でした。
ドイツだと冷戦期のG3、近年だとXM8なんかが真面目に研究していたみたいですが
実現出来なかった理由を見ると、銃そのものではなく予算の面にも
大きな障壁があるように思います。
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