M2ブローニングの作動機構「リコイルオペレーション」について
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以前、「れいこは世界観崩してるから出さない方が良かった」と近しい知人から言われたことがあります。


でも、よく考えてみて下さい。
機関銃を語る上で、まずM2は絶対に外せないんです。何としてでも小銃少女にしなければなりません。
で、M2はこれまでのアサルトライフルや、その他マシンガンとは一線も二線も画した存在です。
なんせ本体だけで1.7m、40㎏もある最大級の重機関銃ですから。


ですが、そんなものを華奢な少女が扱うっていうのは、いくら小銃少女という強引な設定といえど、
あまりにも無理があります。そもそも大の兵士が5人がかりでやっと運用出来るものなのですから。
「やーん、重いよー><」じゃ済まされないわけです。撃つことすら出来ません。
何よりも、巨大な重機関銃と並んだ際、絵面が見劣りしてしまいます。

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そんなわけで、身長190cm近い、筋骨がしっかりした金髪碧眼のお姉さんという、ピンポイントなフェチズムを
煽る設定に至ったわけです。キャラクターには絶対的な動機が必要で、何を使うかよりも、何故使うのかが
リアリズムと直結していると思います。銃がよく登場する漫画はたくさんありますが、
そうした動機づけがなされているものは、私が知る限り園田健一氏の作品だけでした。



ってこんな私見はどうでもいいんです。お話が過ぎました。
そういえばM2の作動機構の話をしてなかったな、というわけで、
今回はM2の作動機構である「リコイルオペレーション方式」のお話です。


■リコイルオペレーションの流れ

M2の基本構造は簡素ながら、それぞれのパーツがいくつもの役割を果たしながら複雑に連動している
非常に解説泣かせな銃です。
ですので今回は、開鎖にのみ焦点を絞って話を進めていきたいと思います。

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M2の閉鎖機構の基本構造です。
青はバレル紫はバレルエクステンション(バレルと結合)、両者を合わせてバレルグループと呼びます。
緑はボルト赤はブリーチロックオレンジはバレルバッファーです。

バレルバッファーというのは後退してくるバレル・バレルエクステンションを受け止める緩衝器の事で、
本当はもっと複雑に連動し、かつ両者の間にはアクセラレーターという重要な部品があるのですが、
今回は省略します。

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撃発直後、銃弾がバレルを通過した後にバレルグループ(バレル・バレルエクステンション)とボルトは
一体となって後退を開始します。
両者は赤いブリーチロックによって結合していますが、やがて一定距離後退するとブリーチロック下面が
落ち込み、ここへブリーチロックが下降していくことでバレルグループとボルトの関係は絶たれます。

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ブリーチロックが完全に下降した事によってボルトは開放され、さらに後退を続けます。
バレルグループも一定距離後退を続けますが、やがてバレルバッファー(オレンジ)にぶつかり、ストップします。


なんでわざわざバレルごときを受け止める大袈裟な装置が必要なのかと思われるかもしれませんが、
M2のバレルグループはそれだけで小さなSMGくらいの重量があります。その後退エネルギーたるや
相当なものになるため、ボルトとバレルそれぞれに緩衝器が付いているのです。
この辺はM2の高い精度に一役買っているとも言えます。

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閉鎖はこの逆順となります。
これがリコイルオペレーションの大まかな流れです。


■補足説明

ここからは興味のある方以外は読み飛ばして頂いて構いませんが、
三番目の図で、ブリーチロックがフリーになっている事を疑問に思われたかもしれません。
何かの拍子でブリーチロックが上に突き出してしまったら、ボルトの前進を妨げてしまいますよね。
実はボルトが戻ってくるまでの間、ブリーチロックはバレルバッファーから突き出した「腕」によって
押さえつけられています。つまりバレルグループがボルトバッファーとぶつかっている間中、
ブリーチロックは上方向へ動かないように抑えつけられているのです。

でもこの時バレルグループが前進しちゃったらどうなるの?とさらに疑問を抱かれたかもしれません。
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実はこの時、バレルグループがいたずらに前進しないよう、かつ前述の「腕」がブリーチロックを
抑えつけるよう、バレルグループとバレルバッファーは互いに結合しているのです。
具体的にはバレルエクステンションシャンク(上図赤丸)とバッファーピストンロッド(下図赤丸)が噛みあっています。

つまりボルトが開放され、バレルグループがバレルバッファーとぶつかった時から、
ボルトが戻ってきて、バレルグループと再接触するまでの間中、バレルグループとバレルバッファーは
互いに結合しているのです。


この辺りの説明はすごく大変で、私の技量で全てのパーツの連動をいっぺんに説明するのは
ちょっと無理があります。
わからない点がありましたら個別にお尋ね下さい。出来る限りお答え致します。


次回は、ヘッドスペースの調整手順と、「タイミング」について少し触れていきたいと思います。
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by clan-aaa | 2010-01-28 21:00 | 「小銃少女」 | Comments(12)
Commented by so at 2010-01-28 21:18 x
更新お疲れ様です
Commented by Hior at 2010-01-29 01:08 x
いったい何重に考え尽くされてるんだ!!?
ってなりました^^;
設計の方々、発想、感覚、組み合わせ、見事ですね・・・

工作が好きで、以前ロボコンの真似事みたいな競技に参加してたのですが、
考えて考えて、考えつくしてから製作しても、
ぜったいどこかでやり残しに気づくんです^^;
どこまで突き詰めても対策が施されてるって、なんだか脱帽な心境です。

動機が「国防」ともなると、本気の度合いが違いますね(@@
Commented by らば at 2010-01-30 05:42 x
うおお、更新お疲れ様です。
ガスオペレーション方式と比べて、なんとまあ複雑なこと。
こんなものを70年以上前にちゃんと製品としてモノにしたジョン・ブローニングはやっぱり

頭 が お か し い(褒め言葉です)

そういえばM2を狙撃銃にして数々の偉業を成し遂げたカルロス・ハスコックⅡ世も5人くらいのチームでこれを運用してたんでしょうね。
狙撃を終えた後は敵に発見されないように、その場でM2を分解して撤収したのでしょうか? それとも銃は放棄したのでしょうか?
どちらにせよレシーバー部持つ人、大変だろうな。
Commented by tieren at 2010-01-30 06:50 x
このバレルアッセンブリの突起は前進のM1917の時点で存在しているようですね(何故か空冷の1919A4/A6では無くなっていますが)。
ということは、グリーン博士の改良によるものではなくブラウニングによるもの、さすが唯一神、細かい(そして肝心である)ところにも手が届いています。
しかしゴツいコイルスプリングだけでなく、油圧ダンパーとは・・・そこも含めてこの銃と.50BMG弾の持つパワーを再認識させられます。
Commented by デュオ at 2010-01-30 22:04 x
毎回、勉強になります。スレ違いですが「魔弾」のMP44の件、勘違いしていて申し訳ありません。
東側でM2ブローニングに相当する銃はDash-Kでしょうか?
そういえば園田健一先生、最近漫画に元気がないな・・・。ガンスミスの続編もなんかおもしろくなかったな・・・。自分のCz75への幻想が薄くなったせいかな?
Commented by 小隊長 at 2010-01-30 22:45 x
コメントへのレスがありませんね。
念のため、こちらにも貼っておきますね。

ttp://a-odagiri.seesaa.net/article/139733989.html

ttp://bfnews.exblog.jp/12383616/


誠意ある対応をお待ちしております。
Commented by clan-aaa at 2010-01-31 05:36
>soさん

ありがとうございます^^


>Hiorさん

ロボコンですか、私は根っからの文系人間なので
そうした競技に参加されるだけでも凄いなと思ってしまいます。。。
ブローニング氏は欠点や弱点を最短距離で解決し、
なおかつ何年経っても枯れない手段で完成へ持ち込む点では
素晴らしい才能を持っていると思います。


>らばさん

最高の褒め言葉だと思いますよ^^

ハスコックも流石にM2を機敏に運用しようとは思っていなかったでしょうから、
拠点防衛兵器として自陣営から使用したのだろうと思います。
M2の有効射程は当時のショルダーウェポンのほぼ全てが
アウトレンジになりますので、待ち伏せして使用すれば
相当の成果が期待出来ると思います。
Commented by clan-aaa at 2010-01-31 05:36
>tierenさん

M1917、M1919との違い、勉強になりました。
ご指摘の通りM2は様々な派生が存在し、また仕様も微妙に違うので
色々と混乱する事が多いですね。
これ程強力な弾薬を使用するにも関わらず特に頑丈なイメージがあるのも
ブローニング氏ならではですね。


>デュオさん

仰る通り東側のポストM2はドーシカですね。
ただ現在はNSVなんかの新型重機関銃に更新されているようなので、
むしろ未だに現役のM2の評価が上がっている感があります。

ガンスミスキャッツの続編は未読でした。今度読んでみたいと思います。
確かに最近あまり見かけないですね。。。


>小隊長さん

重ねてこの度は大変なご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。
改めて記事を投稿させて頂きましたので、もしよろしければそちらも合わせて御覧下さい。
Commented by tiren at 2010-01-31 07:14 x
バレルアッセンブリの突起は1919でも存在していました。
資料の図が小さかったもので勘違いしてしまったようです。
大変失礼しました。
Commented by 小隊長 at 2010-01-31 20:59 x
そんな事どうでも良いので、先のエントリに投稿した私の質問に早く答えて下さい。
Commented by 板金作業員 at 2010-07-23 21:35 x
「小銃少女」読ませていただきました、とても面白いです!
自費出版したら必ず売れると思います←

銃器の説明がとても専門的で色々と学ばせていただいております。

私の中での銃器が登場する作品での傑作はさいとうたかを先生の「ゴルゴ13」ですね、これも動機付けがされていて、ただ適当に人気のある銃火器だけを並べた漫画とは次元が違うと思います、私の知識の中にはあそこから学んだことも多々あります。

ですが、「ゴルゴ13」では、ここまで丁寧な説明は無いのでこれからここで学ぶことの方が多いと思います、更新楽しみにしています。
Commented by 高校坊主 at 2011-01-02 22:18 x
初めての書き込みです。
このサイトに25日にこのブログにたどり着き、一気に読み上げてしまいました。素晴らしい内容で解説もわかりやすくただただ眺めているだけだった世界が一気に広がりました。

いろいろと大変なようで、気の利いたことはあまり言えませんが、これからも頑張ってください!応援しています。
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