一際目立っていたのがレミントンのR51だと感じているのは私だけではないはずです。 AR-15の焼き直しやグロックのフォロワーで食傷気味だった米銃器市場にとって、 ディレイドブローバックの米国製新型ピストル、しかもあのロングガン最大手のレミントンが 投入してきたというニュースが与えたインパクトはかなり大きかったんじゃないかと思います。 R51が登場するまで、私の知る限りレミントンは半世紀以上自社オリジナルハンドガンの製造から 手を引いていましたが、そんな同社がかつて製造していたピストルがR51の 先代にあたるM51ピストルであり、このピストルを最後にレミントンは長きに渡って ピストル事業と距離を置くことになります。 歴史の浅いアメリカで一番歴史の長い銃器メーカーであるレミントンらしいネーミングセンス なのですが、名前だけでなく内部構造もほぼそのまま踏襲している点は とても好感が持てるポイントなんですよね。 このM51とR51に搭載されているメカニズムは、 通称ヘジテーション・ブローバックと呼ばれるものですが、要はディレイド・ブローバックです。 ややこしーくメカニズムごとに細分化した呼称が ヘジテーション(Hesitation=ためらう、の意)ブローバック、 大まかな分類で言えばディレイド・ブローバック、となります。 まずR51のスライド(青)内部には、ブリーチ・ブロック(赤)と呼ばれる独立した部品が入っています。 両者は傾斜した溝でかみ合っています。このセットをスライドグループ(青+赤)と呼びます。 突起にぶつかって動きが止められます。 ボア内部の圧力が下がるまでちょっと待たんかい、って感じで行き遅れるんですね。 ブリーチブロック後端が上昇、フレームから開放されます。 この間、ブレットが銃身から放たれ、チャンバー内部の圧力が下がるまでの時間稼ぎを 行っている点が、ディレイド(遅延)ブローバック、と呼ばれる所以です。 ここでよくある疑問が、M1911のようなショートリコイル方式との違いです。 両者の決定的な違いを把握していれば、例えば閉鎖方式が 同じローラーロッキングであるG3とMG3、前者はディレイドブローバック、 後者はショートリコイル方式であると即座に理解できるようになります。 上述したR51のディレイド・ブローバックの場合、撃発後バレルとスライド(+ブリーチ・ブロック)は 即座に離ればなれになります。 撃った瞬間「はいさよならー」ですな。 M1911のショートリコイル方式の場合、バレルとスライドはしばらくの間つながったまま後退します。 撃った直後も「やだ!離れたくない!」とつながったままですな。 M1911のようなティルトバレル構造の場合だと「しばらく後退」したのちバレルが傾斜し、 離ればなれになります。 この、「しばらく後退」の距離が弾薬の全長より短いので「ショート」リコイル方式と呼ばれます。 ちなみに弾薬の全長より長い距離つながったまま後退するのであれば「ロング」リコイル方式ですね。 ショルダーウェポンだとほとんど見かけませんが。ハンガリーのゲパードなんかが有名でしょうか。 つまるところ、両者の決定的な違いは 「撃発直後、バレルとスライド(ブリーチ)が完全に閉鎖されているかどうか」といえます。 両方式、一長一短ありますが、ディレイドブローバックの場合は ①バレルが固定できるため命中精度が確保しやすい ②(自動拳銃の場合)リコイルスプリングのレイアウトが柔軟なので、コンパクトに設計できる →R51のようにリコイルスプリングを銃身周囲に設定すれば、ボアラインも下げられる! 命中精度がもっとあがる!うひょおおお!!! ③(R51の場合)ブリーチブロックを独立させた恩恵として、リコイルスプリングのレートを軽くできる いやーいいことずくめですね! と言いたいところなのですが、ことR51では短所として ①機械強度に不安がある (私個人の印象です。工業製品としての経験値が問題かなと思います) ②構造が複雑 だと感じています。 ②に関してはショットショーのブースでもディプレイモデルが組み立て不良で 説明員が再度組み上げなおしていた、などと指摘する記事もあり、ちゃーんと説明書読まなきゃ ダメよーん!な感じが、アップル製品に見られるマニュアル排除志向なアメリカ人たちに 果たしてどこまで評価してもらえるのか、という不安を感じます。 それでも、猫も杓子もショートリコイルなハンドガン市場において レミントンというアメリカを代表する老舗ガンメーカーがこういう形で勝負に出た事は、 実に魅力的ですよね。
by clan-aaa
| 2014-02-12 03:39
| ミリタリー
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Comments(2)
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中内
at 2014-02-13 23:02
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思い出したくない事を掘り返す内容かもしれません。御無礼をお許しください。
あの騒動からしばらく経ち、もう帰って来ないのかと思いつつ、偶然作者様のページに寄りました所、更新されているのを見た時は思わず泣いておりました。創作活動への復帰は色々と辛い事も有りますでしょうが、どうぞ無理をなさらぬ様頑張って下さい。 私自身の中ではレミントンといえば狩猟用の銃器メーカーというイメージしか無く(2年前まで猪狩を続けておりました)、拳銃を過去に製造していたのも初めて知ったという具合なのですが、どこもかしこも同じ様な銃を作っている中、他とは少し流れを異にするという事はそれだけで価値がある事なのでは無いかと思います。 長文駄文失礼しました。活躍をお祈りしております。
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clan-aaa at 2014-02-14 07:22
>中内様
こうしたコメントを頂戴すると 私もこみ上げてくるものを抑える事が出来ません。 かの一件についてはブログとその読者の皆様から逃げていた 私に全ての責任があります。事の発端も同様です。 こちらこそ長年にわたる非礼をどうかお許し下さい。 未だに以前の調子を出す気概が無い腑抜け者のままですが、 また目を通していただければこれ幸いに思います。 今後ともよろしくお願い致します。
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