FN FAL その光と影
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春のFAL祭り、最後は内部機構です。
つらい事があっても落ち込まない、ライフル界の女帝にせまります。



【西で一番タフなやつ】
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私は軍用小銃の評価基準における最優先項目「頑丈さ」において、
FALはAKに比肩する存在だと思っています。
しかしこのタフな構造には後述するデメリットも併在している点を認めねばなりません。


というわけで、FALの心臓部である「ティルティングブロック閉鎖機構」「落ち込み式閉鎖機構」を
図解してみますので、ロータリーボルト閉鎖機構 などと比較しながら
見て頂ければと思います。

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この図は完全に閉鎖している状態をあらわしたものです。
赤はティルティングブロック、オレンジはブロックキャリア、
緑はロッキングボルト(レシーバー)です。

えーごめんなさい、以下赤い部品に「ボルト」と書いておりますが
正確にはティルティング「ブロック」です。
回転しない鎖栓は「ブロック」、回転運動がかかる場合は「ボルト」ですね。
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①撃発後、ガスオペレーションによってピストンがブロックキャリアを後退させ、
ブロックキャリアはティルティングブロックとロッキングボルトの関係を断ちます。
ティルティングブロックの後端をキャリアがぐいっと持ち上げる感じです。

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②ティルティングブロックとブロックキャリアは抱き合ったまま後退します。

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③お次は閉鎖です。ティルティングブロックの傾斜した後端上面を
キャリアブロックが押さえ込みながら両者は前進します。
このときティルティングブロック後端には下方向へ強い力が掛かっています。

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④下方向へ押さえ込まれたティルティングブロックはレシーバーのへこんだ所へ
はめこまれます。ティルティングブロックの上にはブロックキャリアがいるので
ティルティングボルトは身動きが取れなくなります。完全閉鎖の状態です。

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一連の流れはこんな感じです。


で、一番の問題はレシーバーがロッキングボルトを兼ねている点です。


例えばAKやM16のようなロータリーボルト閉鎖機構の場合、
閉鎖はボルトとバレルの噛み合いによって完結します。
レシーバーは銃身とボルトグループのガイド役に過ぎません。


しかしFALのようなティルティングブロック閉鎖機構の場合、
レシーバーという銃の中で一番大きく重たい部品がロッキングブロックを兼ねているため、
レシーバーは大変頑強かつ精密に製造する必要があります。


そんなわけでFALはレシーバーをスチールブロックから削り出して製造しているのですが、
数多ある自動小銃の中でもトップクラスの耐久性が評価される反面、
その製造には大変な時間と手間が必要で、かつ部品単価が高価になってしまうデメリットが指摘されます。

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ただここで注意して頂きたいのは、
現在製造されている自動小銃の大半がロータリーボルト閉鎖機構を採用している理由が
前述の問題によるものだけではないという点です。


【ボルトをむやみに動かしたくない!】

ティルティングブロック閉鎖機構のもう一つのデメリットは、
ティルティングブロックの稼動領域にあります。


ティルティングブロックが閉鎖する過程をよく見ると、
ブロック後端が上下に動いているのがお分かり頂けるかと思います。
つまり稼動領域は「前後」「上下」です。


使い込むうちに銃は「ガタ」が出ます。
しかしガタが出ぬよう部品同士のクリアランスを上げると、今度は砂塵などの異物混入に弱くなってしまいます。
軍用銃の公差がルーズな理由の一つですね。


一方、ロータリーボルト閉鎖機構におけるボルトの稼動領域は「前後」のみです。
ティルティングブロック閉鎖機構のように「上下方向」へのクリアランスは深く考慮する必要がありません。
つまり精度面でティルティングブロック閉鎖機構はそもそも不利なのです。


現在、ティルティングブロック閉鎖機構が支持されなくなった背景には、
こうした複合的な要素が存在します。


特にドイツなんて銃身や閉鎖機構のティルトダウン・ティルトアップを本当に嫌がってきました。
もう執念というか、意地というか、、、、ピストルだとマウザーC96、ルガーP08、ワルサーP38が好例です。
G3はそうしたドイツ銃器美学の集大成とでもいえるんじゃないでしょうか。


余談ですがチェコのVz58なんて、どーしてもボルトはティルトモーメントさせたくないよぉぉぉぉ、
でもAKのレイアウトはやだよぉぉぉぉ、、、、で、分離独立させたポップアップブロックを
ショートストロークピストンでオペレート、しかもストレートハンマー採用で
銃身―ボルト―ハンマーのロイヤルストレートフラッシュじゃあ!!!!
うわぁこいつ必死やな、、、と思えてしまうくらい作動機構の稼動領域にシビアな例もあります。

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話がだいぶ逸れましたが、FALはそれでも命中精度を確保しようと部品同士のクリアランスを
上げた結果、「異物混入に弱い」という問題点が中東・アフリカ地域の戦闘で露呈してしまいました。
決して致命的な問題とはなりませんでしたが、FAL以降ティルティングブロック閉鎖機構を採用した
アサルトライフルはヒット作不在となり、現在に至ります。


20世紀の兵器史に名を残す歴史的傑作小銃、FN FALの眩い光と深い影、
しかしそれでも老兵は死なず、ただ消え去る事もなく、その存在感は今もなお際立っています。

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by clan-aaa | 2014-04-11 08:30 | 「小銃少女」 | Comments(0)
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