月刊コンバット誌の某有名ライター(個人的にあまり好きではないです)が大々的な賞賛記事を書いた途端、 日本では一種の神話的評価が蔓延った経緯があります。 デザインは悪くないのですが、ちょっと高すぎるだろと思います。 さて今回はそういったナイフや、ひとむの持つマチェットの話ではなく、銃剣=バヨネットのお話です。 前回取り上げた自動小銃の外的付加価値の一つであるグレネード・ランチャーと並び、 その存在が不可欠とされる銃剣ですが、何故ハイテク兵器が趨勢を競うこの時代に 前世代的な装具が自動小銃に必要なのでしょうか。 今回は、そんな不思議な存在「バヨネット」のお話です。 ■剣としての銃 バヨネットは、その昔まだ小銃が単発式だった17世紀頃に生まれた武器です。 その当時、小銃は一発撃てば再装填に非常に時間がかかる道具であり、 緊迫した状況下では続けざまに連射する事は難しく、対峙する陣営は共に銃弾を一通り撃ち尽くすと、 銃を剣に持ち替え、号令を合図に一斉突撃を行っていました。 そうした戦況下で、非常に長い道具であった小銃を「槍」に見立て、銃口に短剣を装着し戦うようになります。 フランスのバイヨンヌ地方で生まれたこの武器は、その地名にちなんで「バヨネット」と名付けられました。 その存在が絶対視されていました。 バヨネットを使用した戦争の中で、歴史上最も最大規模であったのが第一次世界大戦です。 塹壕戦による超至近距離での戦闘では、咄嗟に敵を刺殺出来るバヨネットは重要な存在だったのです。 しかし、その後バヨネットはその実用的価値を失っていきます。 小銃の発達と、それに伴う戦術の近代化によって、バヨネットそのもので勝利を収めるような戦況は 生まれなくなったからです。 ■自動小銃とバヨネット アサルトライフルとして必要な条件の一つに、「バヨネット・ラグの存在」があげられます。 バヨネット・ラグとは、バヨネットを小銃本体に取り付けるための小さな突起であり、 草創期のアサルトライフルであるM14やAK-47から、米軍の最新アサルトライフルのM16まで、 「アサルトライフル」と名の付く全ての自動小銃には、原則として必ずバヨネット・ラグが装備されています。 しかし、バヨネットで勝利を収められるような戦争は終わりを告げました。 最新のアサルトライフルが持つ能力は、バヨネットの実用的価値を補って余りあるからです。 では何故、バヨネットは未だに前線兵士のライフルにも必要とされているのでしょうか。 実は、その理由を皆さんにお伝えする最適な文章を、私は表現する事が出来ません。 あえて言うなら、「バヨネットが付いた自動小銃を持つと、何故か興奮するから」とでも言うほかありません。 これは戦争が、人と人との争いが、精神的活力に左右されやすいからです。 こればかりは実際に持ってみないとわからないのですが、 バヨネットが付いた自動小銃を持つと、大抵の人は奮起・興奮します。 これこそが、原始的な武器を手に精神的活力だけを頼りにして命がけで戦っていた先人達のDNAが、 現代を生きる我々にも脈々と受け継がれている証拠であり、 自動小銃にバヨネットが付いている最大の理由だと解釈すべきでしょう。 どんなに優れた性能を持つ最新のアサルトライフルでも、人の精神状態を左右する事は出来ません。 バヨネットは、無機質な工業製品である小銃に宿る唯一の気概なのです。
by clan-aaa
| 2009-04-28 07:00
| 「小銃少女」
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