今回は、その「ローラーロッキング」とは一体どういうものなのか、 そして、G3を生んだ世界的銃器メーカー「HK(ヘッケラーコック)社」について 触れていきたいと思います。 ■「ローラー・ロッキング構造」とは これまで2ヶ月間小銃少女を描いてきた中で、私はわざと「銃の作動機構」について触れてきませんでした。 というのも、作動機構は銃を理解するうえで最も難関とされる分野であり、無用な説明によって 読者の皆さんに混乱をきたさないように意識してきたからです。 今から行うローラーロッキング構造の説明は、実物からかなり簡略化した図と文章を使用します。 ですので、今回の説明は正確な構造説明とはいえませんが、 「だいたいこんな感じで銃は動いているんだな」くらいに受け止めてお読み下さい。 青色はバレル(銃身)、緑はボルト、黄色は薬莢、オレンジは弾頭です。 この上下一連の図は、バレルの中に入った銃弾が撃発され、弾頭が発射された過程を示しています。 上は、バレルに弾薬が装填され、ボルト(緑)で栓をされている状態です。 下は、弾薬が撃発され、弾頭が飛翔していった直後の状態です。 この後、銃弾を連続的に撃ち続けるためには、ボルト(緑)を何らかの方歩で後退させる、 すなわち黄色い薬莢を何らかの方法でバレルから引き抜き、 新しい弾薬を装填しなければなりません。 「ガス圧利用方式(ガスオペレーション方式)」によってその工程を完了させます。 これは、撃発後に発生する火薬の燃焼ガス(赤いもや)を、バレルに開けられた穴から 噴出させ、そのガス圧を利用してボルト(緑)を動かす構造です。 AK-47、FAL、六四式小銃、広義ではM16もこの方法を利用しており、 現在では最もポピュラーな作動方式となっています。 しかし、この方法はバレルに対して大きなストレスがかかります。 何故なら、バレルと常に密接な関係にあるボルトが、射撃中に往復運動を繰り返し、暴れる事で バレルをいたずらに振動させ、命中精度を落としてしまうからです。 一方、G3に採用されたローラーロッキングは、ガスの圧力を直接利用する事はありません。 作用反作用の法則により強い力が発生します。 これが、いわゆる銃の反動です。 ローラーロッキング方式は、大変大まかな表現になりますが、 この反動を利用してボルト(緑)を動かすのです。 この方法では、バレルに対するストレスが非常に少なくなる利点があります。 そして、この方法を使えば、非常に高い命中精度を確保する事が出来ます。 そして、この作動機構を搭載する事によって、とあるジャンルの自動小銃に 革命的な進歩をもたらした銃器メーカー、それが「HK社」です。 ■銃器界の異端児 ピストル用の弾薬をフルオートで撃ち出す自動小銃、それが「サブマシンガン」です。 サブマシンガンは、古くからただ単に弾をばら撒くだけの道具と見なされており、 狙って当てる「狙撃」のような使い方とは無縁な存在でした。 しかし、このサブマシンガンに、先に述べた「ローラーロッキング」を搭載させ、 数百メートル先の標的への狙撃をも可能にさせたサブマシンガン「MP5」を生み出したのが「HK社」です。 それまで見向きもされなかったサブマシンガンという存在価値を大いに引き上げ、 世界的な成功を収めました。 HK社は、常に斬新な視点から銃器開発を行い、また独創的な材質・構造・設計思想を持った 銃器をこれまで多く手がけてきました。 歩兵戦術に革命をもたらす可能を秘めた自動小銃「G11」「OICW」を構想したり、 世界で初めてプラスチックを大胆に取り入れたピストル「VP-70」を開発したりと、 その発想は常に世界の銃器業界を変えてきました。 「コッファー・マシンピストル」は、HK社の独創的銃器開発の代表例といえます。 しかし、時代が常に新しい物を求めるのかと言えば、必ずしもそうではありません。 確実・堅実なものこそが信頼に直結する銃器業界では、特にその傾向が強いと言えます。 HK社が現在ドイツ軍に納入し、同社のアサルトライフルの現主力モデル「HK50シリーズ(G36)」は それまで同社の主力作動機構であったローラーロッキングを廃止し、 AKのようなガスオペレーション方式に改められています。 短所を個性でカバーしていた古きよき時代の自動小銃、G3は 銃器業界の異端児「HK社」を象徴する、最初で最後のアサルトライフルでした。
by clan-aaa
| 2009-06-06 07:00
| 「小銃少女」
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Comments(1)
Commented
by
じゅうおた
at 2010-02-25 00:05
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G3のローラーロッキングはディレード・ブローバックのガス圧利用ですが。
証拠はチェンバーに施されたフルート。 原理的にはトンプソンModel1921の斜動ブロック利用ハーフロッキングと同じ意図で、 高圧に依って一気に薬室が解放しないよう、ボルトヘッドに掛るケースからの圧力を利用してブロウバックを遅延させるものです。
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