「アサルトライフル」という言葉が生まれた頃 "United States Rifle"という、銃器界では世界で最も誉れ高い称号を手にしながらも その本質を理解されず、歴史に翻弄された自動小銃がアメリカで生まれました。 今回は、アメリカ初のアサルトライフル 「U.S. Rifle Caliber 7.62mm M14」のお話です。 ■戦勝国の悲劇 第2次世界大戦という未曾有の大戦争を経験した各国が、 戦後早急に取り組んでいた課題が「アサルトライフル」の開発でした。 特に欧州戦線においてドイツのStg44の脅威を目の当たりにした西欧各国は、 中・小型弾薬を使用する直銃床スタイルの新型自動小銃の開発にいそしんでいました。 しかし、そうした欧州の流れとは真っ向から対立したのが、 他ならぬ最大の戦勝国アメリカでした。 第二次大戦において、アメリカは「M1ガーランド」という自動小銃を世界で初めて主力小銃として採用します。 このM1ガーランドが、アメリカの勝利を導いたといっても過言ではないほど「当時は」優秀であった事、 そして、他の欧州各国とは違い、東部戦線でドイツのStg44の脅威をそれほど味わう事が無かった為、 アメリカはアサルトライフルの性質を本当の意味で理解していませんでした。 この頃既にM1ガーランドのような大型で強力な弾薬を使用するライフルを 運用するような時代は終わりを告げ、 「400m以内の至近距離の敵を実用的なフルオート射撃で圧倒する制圧力」 が主力小銃に求められていたのです。 にも関わらず、アメリカはM1ガーランドの性能を買いかぶり、 こうした世界的な情勢を鑑みずに大型弾薬の採用をなおも続行します。 この、小銃の「間合い」を大国アメリカが見誤ってしまった事で、 戦後初の「U.S. Rifle」と、西側各国の自動小銃に悲運が訪れます。 ■M14の誕生 実用的なフルオート射撃が可能な中・小型弾の採用を主張する欧州各国に対し、 アメリカはその国際的な立場を濫用し、M1ガーランドの使用弾薬を若干サイズダウンさせた 308win(=7.62mm×51)という大型弾を次期主力小銃の使用弾薬として採用する事を決定します。 今以上に強力な国際的発言権のあった当時のアメリカの判断は絶対で、 アメリカの採用した弾薬は、他西側諸国も採用せざるをえませんでした。 こうして、308win弾は7.62mm×51NATO=北大西洋条約機構加盟国軍標準弾薬として 正式に採用される事になります。 この弾薬を使用させるため、M1ガーランドをサイズダウンし、 フルオート機能を搭載させた試作機をいくつか経て誕生したのが アメリカ初のアサルトライフル「M14」でした。 しかし、強力な大型弾薬を使用する為に弾倉には20発しか装填出来ず、 実質上お飾りと化したフルオート機能しかない「高性能なM1ガーランド」で 渡り合えるほど、当時の戦場は甘くありませんでした。 ベトナム戦争では、M14の性能に見切りをつけた米軍兵士が AKを鹵獲し、使用するという事態にまで発展します。 数多くの課題点、時代にそぐわぬ設計、そして何よりも、 「米軍主力アサルトライフル」としての実力が問題視され、ついにM14は 10年足らずという非常に短命な生涯を終え、M16と交代する事になります。 ■M14の影響とその後 その後のM14を待ち受けていたのは 西側の自動小銃達の足を30年近く引っ張ったという誹謗、そして 米軍史上最悪の主力小銃という評価でした。 特に、その使用弾薬である308winが採用されなければ、 さらに評価されたであろう自動小銃をいくつも設計していた西欧各国の銃器メーカーは M14によって幾度となく振り回されました。 中でもベルギーFN社のFALは、弾薬の変更によって機関部の肥大化と操作性能の低下、 さらにはアサルトライフルの命ともいえるフルオート機能をオミットさせられた一番の犠牲者でした。 (参照)不遇の傑作 -FN FAL- しかし、そうした散々な評価ばかりだったM14に、一筋の光明が見えます。 狙撃銃としての活躍です。 強力な大型弾を使用する事が欠点だったアサルトライフルとしてのM14の特徴が、 狙撃銃として使用する際に大きな強みとなったのです。 加えて、ボルトアクションに比べ素早いリアクションが可能であるオートマチックライフルは 複数人の敵を相手にする状況が生まれやすい市街戦において非常に有効的なのです。 現在では、アメリカ陸軍のM21/M25、海兵隊のDMR、海軍のEBRなどが M14をベースとした狙撃銃として活躍中です。 ■アサルトライフルに生まれて M14の評価は二分しています。 威力や作動性能の観点から一定の評価が出来るとする意見、 そしてアサルトライフルとしての歴史的な背景・評価から駄作だとする意見です。 数値上の優位性やごく一部の兵士による過大評価、狙撃銃としての活路以前に、 あのような旧世代的自動小銃が当時の大国の主力小銃足りえるとは思えないからです。 アメリカがM14を採用した事によって西側各国が払った代償は計り知れないものがあります。 特に実用的な主力小銃の運用に関して、西側は東側に30年近い遅れを取る事になってしまいました。 M14が全ての原因とまでは言えませんが、その影響はかなりのものがあったと言えます。 何物にも替え難い魅力がありますね。 評価はしていませんが、嫌いではないんですよ。 特に絵の描き方なんかに肩入れ感が出ちゃってますね。 さて、今回をもって全ての小銃少女の解説が一通り終わりました。 次回以降もしばらく基礎的な題材を取り上げて行きたいと思います。
by clan-aaa
| 2009-06-23 07:00
| 「小銃少女」
|
Comments(2)
|
このブログについて
カテゴリ
検索
最新の記事
以前の記事
画像一覧
|
ファン申請 |
||