【兵器を興味を持つということ】 「兵器と少女」というコンテンツで今年ダントツ人気だった艦これですが、 私自身プレイこそしていないものの、知人がやっているのを見る限り キャラクターデザインの完成度は唸るものがありました。 イラストの足柄なんて、妙齢の女性で「飢えた狼」を表現する辺り面白いですね。 こうした擬人化コンテンツが年月を重ねるたびに風化するどころか 未だにその存在感を放っている事に対して一種の安堵すら覚えます。 その一方で、兵器のこうした「安易」(この表現は悪しからず...) な表現に対する異議も少なからず存在しています。 人殺しの道具に対して、こうした形でアプローチする事に 一種の嫌悪感を抱いておられる方から、私自身何度か意見を頂戴した事があります。 「13歳のハローワーク」という本をご存知でしょうか、 私が中学生の時にちょっとした話題となりまして、 図書室でちらーっと流し読みをした程度なので記憶は曖昧なのですが、 「モデルガン製造」という項目に目を通した際、その説明書きに とてつもない怒りを覚えた事だけははっきりと記憶しています。 記憶の限り、かいつまんで同箇所を要約すると、 ・武器や兵器に興味を持つのは子供だけ ・人殺しの道具に興味を持つこと自体頭おかしい ちょっと思い出補正入ってるかな?(笑) 当然この憤りには当時の私自身がそれだけ銃器に対してのめりこんでいた事も 関係していると思いますが、 多様な好奇心に対して偏向的な視線を向けながら、「好きな事を仕事にしよう」 と謳う著者の考えにどうしても納得が行かなかったのです。 【兵器が持つ魅力の正体】 兵器は純然たる殺傷道具です。 その当時、毒物内包が噂されたほど人体に苦痛を与えるソ連製の7N6弾(5.45×39) が良い例で、特に弾薬に関してはいかに効率よく生物を殺傷できるかを突き詰めた研究成果の結晶です。 良い銃とは、よく当たる銃でもよく動く銃でもなく、効率よく苦痛を与える事が出来る銃であり、 悪い銃とは、当たらない銃でも動かない銃でもなく、誰も殺せない銃なのです。 ですがそんな残忍性の具現体であっても、人は関心を失う事がありません。 それは人類が、有史以前から培ってきた獲物を仕留める道具としての完成度を 追い詰めてきた狩猟本能、利器を扱う動物としての人間の本質が生み出した必然であって、 決して病理的な猟奇の深淵から這い出て来た酔狂ではないのです。 しかし、文明の発達に伴い狩りはおろか血を交えた闘争から距離をとり続けた結果、 現代人にとっての兵器の魅力はデザインや数値上のスペックとなってしまいましたが、 鯨油で何度もバフ掛けされたオールドコルト1911のファイヤーブルーや ネジを用いずパズルのように組み合わされたルガーP08の機能美に惹かれる根底にも 両者が持つ武器としての、殺傷道具としての完成度が確かに存在しています。 従って人間は、人殺しの道具というくくりに留まらず、殺生に関わる手段や事象に対して 関心が薄れる事はあっても、無くしてしまう事はないのです。 【「風立ちぬ」が目を背けたゼロ戦の本質】 今年の夏に「風立ちぬ」を鑑賞しました。 私の中で宮崎監督作品の一番と言ってもいいくらい素晴らしい内容でしたが、 一点だけどうしても腑に落ちませんでした。 それは堀越技師がゼロ戦設計の過程において、全く血の匂いを感じさせなかった点です。 ゼロ戦はエリコン20mmを搭載している点等からも、列強各国の攻撃機と比較すれば 重武装だと評価できるにも関わらず、作中ではただ漠然とヒューマニズムの延長に存在していました。 これでは沈頭鋲や超々ジュラルミンの描写に見られる同機の肉薄した軽量設計が 人命軽視の矛盾をはらんではいないかと、疑問に思えたのです。 兵器に対する好奇心を様々な形で消化する事は決して異質ではありませんが、 その存在動機が「殺生ありき」である点は絶対に見過ごせません。 ゼロ戦は効率よく敵機を排除する為に生み出された道具であり、 AK-47は年齢性別国籍を問わず扱える殺傷道具である事を忘れてはならないのです。 擬人化という枠にとらわれてしまうと、人間が兵器という独立した存在に すり寄ったように見えてしまう為、何かのきっかけでその本質である「殺生ありき」という点が 露見した途端、思わず身構えてしまうのは平和な現代人として致し方ないのですが、 兵器とは、そもそも能動的な殺生行為を原理にもつ人間を「擬人化」ならぬ 「擬物化」した存在なのです。
by clan-aaa
| 2013-11-29 18:00
| その他
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Comments(9)
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ハリー
at 2013-11-29 21:13
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貴方様の意見にものすごく賛同しています
僕は銃はがきのおもちゃとか、最低の人間が手にするものと母親から言われてきたので銃を侮辱する意見は絶対許せません めんどくさい質問ですが使える銃は人を効率よく苦しめる銃でも、銃が人間の擬物なら人間を苦しめる人間は使える人間ではないんじゃないでしょうか?少し矛盾している気がします、でも根本的には人=兵器の意見には賛成です
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clan-aaa at 2013-11-30 13:50
>ハリー 様
コメントありがとうございます。 擬人化という行為には、物事の本質を抽出する作用があります。 私達のような好事家にとって残念な事は、今の時代をもってすれば、 人間の悪い所を抽出したものが銃をはじめとした兵器だという認識が 一般的だと認識されている点です。 この点はハリー様のお母様も仰るように、兵器に対しての認識はもとより、 現代に生きる人間にとって、兵器の存在を必要だと感じる機会はまず無い為、 どうしても意見が真っ二つに分かれてしまいます。 ですが人間には、悪い所もあれば良い所もあります。 (この良し悪しの基準が難しいのですが…) 戦闘機が悪い所を抽出した存在だとすれば、 旅客機は良い所を抽出した存在といえるかもしれません。 ですので、ただ人を苦しめる事だけが本質ではないと思っています。 私なりの考えをご説明させて頂いたのですが、どうかご理解頂ければ幸いです。 貴重なご意見ありがとうございました。
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ハリー
at 2013-12-01 20:08
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なるほど。
素晴らしい意見、ありがたいです。 矛盾がときました。 確かに兵器は苦しめる道具ですが、兵器ではない人間の作り出したものは人間に役立っていますもんね。 カラシニコフ氏が 「自分は銃なんかを作るより人の役に立つ芝刈り機みたいなのを作りたかった」 といっていました。 世界一人を殺した銃を作り出した人がけして悪に染まった人だとは限らない事を思い出して、自分が恥ずかしいあまりです。 自分は人がが兵器だけみたいな気持ちでした。でもそれは決して違うんですね。 こんな自分のためにわざわざお時間を頂きまことに嬉しいです。 ご返信ありがとうございました。
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「」
at 2013-12-03 01:22
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どぅおっ!?
ふと思い出して覗いてみたら更新再開されていたとは…ありがたい… 私が銃に興味を持つのは ・単純にカッコイイと思う ・金属加工製造業勤務なので銃を製造した人に共感がもてる などでしょうか ただやはり一番の魅力は「ただ一つのことに特化したものは美しい」ということだと思います 対象をを殺傷するために生まれた兵器・武器はまさにそれかと(もちろん特化したものは他にもいろいろありますけども) 風立ちぬはまあ…監督が「兵器は大好きだけど戦争は大嫌い」という偏屈なのでああなったのでしょう 兵器である戦闘機などが好きな自分と戦争反対を訴える自分という矛盾を抱えた自らの姿が投影されている映画なのです あと、ただただ開発バカの堀越二郎の生きざまを描いた作品でもありますのでそれも考慮されて戦闘描写は入れられなかったのではないでしょうか? 長くなって申し訳ありません これからもがんばってください!
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clan-aaa at 2013-12-06 15:49
>「」 様
ご声援誠にありがとうございます。 仰るとおり洗練された道具が持つ美しさは銃器がもつ大きな魅力だと思います。 風立ちぬについてはご指摘の件、同感いたします。 これについては機を改めて記事を上げたいと考えておりますので、 再度ご意見頂ければ幸いです。 コメントありがとうございました。 今後ともよろしくお願いします。
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charlie21c
at 2014-01-29 23:19
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はじめまして。前から読んでいましたが復活おめでとうございます。
「13歳のハローワーク」の記事の下りですが、僕も気になって読み返してみました。 「頭おかしい(笑)」とまではいかないにせよ、「戦争に興味を持つのは他に興味のあることがないから戦争に興味があると思い込んでいる」、「青年期を過ぎてなお戦争が好きという人は、人生の選択肢が非常に狭くなる」みたいなことを書いてましたね。ちょっとカチンとくるのも分かります。 二十歳近くなってサバゲ~なんぞやってる自分みたいな奴は穀潰しなんでしょうか。 話変わって、今回の新シリーズの主題は、64式を通じて日本の小銃界に迫っていくという感じなんでしょうか? 更新楽しみにしています。
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clan-aaa at 2014-01-30 03:27
>charlie21c 様
ご声援ありがとうございます。またお目にかけて頂き大変嬉しく思います。 ハローワーク、やはりそんな感じの下りでしたよね、私も記憶が曖昧でしたが カチンときたことだけは覚えていました。 もうちょっと言い回し変えて欲しいですよね(笑 新シリーズは六四式が主軸ですが、アサルトライフルの存在意義が お題目になっています。 今後ともご支援の程よろしくお願い致します。
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マカロフ
at 2014-03-15 22:15
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初めまして
私は艦これというものが いまいち好きではありません… 撃沈や大破があまりにも、ふざけているというか、軽すぎるというか 軍艦の美しさが一切ないからか… もうなんでも萌えキャラにするのはやめてほしいです。 "そうゆう物"にして欲しくないのです。
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clan-aaa at 2014-03-19 05:27
>マカロフ様
はじめまして。 コメントありがとうございます。 ご指摘の点については私の立場からは何ともお返事しにくい点、 ご理解頂けると幸いです。 おっしゃる通り艦船は美しく、また軍艦は儚くもあります。 実戦経験のあるモデルだと尚更だと思います。 そしてこの儚くも美しい存在を愛でる手段として、 擬人化だったり萌えを用いることに対して抵抗を感じる事は 自然な感情だと思います。私が言うのもおかしな話ですが。。。 ただこういった偏狭な分野に対して、そうした間口を通じて 少しでも興味を持ったり理解を深める方が増えることは、 一つのメリットなのではないかと思っております。 またご意見寄せて頂ければこれ幸いに思います。 今後ともよろしくお願い致します。
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