……えー、時間稼ぎ第二弾、、、ではなくて、 今回から「春のFAL祭り」開催したいと思います。 と申しますのも、当ブログの検索ワードで「FAL」がとっても多いんですね。 玄人向けなモデルながらも皆さん意外と関心があるのではないかと思いまして、 ちょっと集中的に取り上げてみようかなと決めた次第です。 尚、おおまかな歴史や概要については以下記事をご参照下さい。 【”怪銃”FALの誕生】 採用国数90ヶ国以上、製造は英国二大オーディナンス (ロイヤルスモールアームズファクトリー、BSA)を含めた世界15拠点で 行われた歴史的傑作FALは、小銃というカテゴリに留まらず 近代兵器史から見ても稀に見る完成度を誇っているにも関わらず、 その知名度はM14やG3といった30口径クラスの同期たちと比べると極めて低い現状にあります。 この”西の怪銃”FALの設計を手掛けたのは、アメリカの天才銃器設計者ジョン・M・ブローニングの 遺作、ブローニングHPの最終設計調整に携わったとされるFN主任設計技師デゥードネ・ザイーブと、 そのサポート役、エルネスト・ヴェルヴィエ(同氏は後に汎用機関銃の名機「FN MAG」を生み出します) の両名でした。 両者の手掛けた銃器に共通した特徴はただ一つ、「実用第一」である点です。 第二次大戦が終結し、欧州各国が次世代の軍用弾薬を模索する中で、 ザイーブは東部戦線でこれでもかと威力を見せ付け、 十分なバトルプルーフがなされたドイツ軍の7.92×33mmクルツに着目します。 かつて自国を苦しめた敵国の弾薬である事などはお構いなしに実用性を最重要視し、 同弾が次世代自動小銃に対してこの上なく適任であることを信じていたザイーブは、 FALのプロトタイプ、通称「Serial No.1」を同弾仕様にて完成させます。 【決まらぬ弾薬】 1948年にこのSerial No.1はイギリス軍とベルギー軍立会いの下でデモンストレーションが 行われたのですが、この後のFAL発展改良に際してイギリスの存在は欠かせないものとなります。 それを決定的なものとさせたのがModel No.1(Serial No.2)における .280ブリティッシュ弾薬の採用でした。 .280ブリティッシュ弾はイギリス軍の兵器設計局次長リチャード・ビーチングが 設計したミドルクラスのライフル弾です。 同弾は想定レンジが600ヤードである点からもわかるように、 イギリス軍はその当時制式採用していたSMLEで使用する.303ブリティッシュが オーバーキルであり、また射程距離を引き換えにしてでも「優先させるべき条件」を 次世代弾薬に求めていた事から誕生した中型弾薬です。 ちなみに、当時の同クラス弾薬のスペックを比較すると、 【英】.280ブリティッシュ (140gr;2,415fps) 【独】7.92クルツ (125gr;2,300fps) 【露】7.62×39mm:M43 (122gr;2,330fps) 弾薬は決してデータだけで語れない部分があるのですが、 .280ブリティッシュはアサルトライフル弾薬としての資質が 少なくともデータ上は十分である事がわかります。 .280ブリティッシュはこの後、米軍T65ライフルケースを参考にした改良が施されます。 この弾薬は英国で.280/30、FN社では7mmショートと呼ばれた幻のNATO弾でした。 そしてこの当時、ザイーブ、ヴェルヴィエをはじめとしたFN社の技術陣は、この7mmショート弾が NATOで採用される事を信じていました。 しかし、それでもFALは最終仕様の決定に踏み切れない状況におかれていました。 何故ならそれは銃や弾薬ではなく、もっと別次元の問題だったのです。 【銃の性能は問題ではない】 大戦後、生産設備とその工員が大量余剰となったスプリングフィールド造兵廠を 何としてでも再稼動させたいアメリカと、 面子を守るべく政治的譲歩を必死に避け続ける欧州諸国、 台頭するソ連を前にして一刻も早く結束すべき西側内部では、 西側次期制式統一弾薬の決定という議題をめぐって この時期大きな不和が生じていました。 このあおりを受け、銃の能力や弾薬の仕様が問題ではなく、ナショナリズムの衝突によって FALは仕様を次々と変更されてしまうのですが、 特に1952年のSerial No.28における米軍コードT-65規格、.308win弾薬仕様への変更は その後の運命を左右する大きな転機となります。 米軍のトライアルに提出する為に仕様を変更したこのSerial No.28は 不本意にも今日まで製造されるFALのベースモデルとなりました。 1954年にNATOがオタワ合意で.308winを7.62mmNATO弾として採用する事を決定、 1957年にはFALがイギリス軍に、M14がアメリカ軍に採用されます。 ザイーブとヴェルヴィエが追い求めた理想に時代が追いつくには、 5.56mmNATO弾が採用される1976年まで待つ事となります。 時代の不遇に翻弄され続けたFALですが、全世界で少なくとも 700万丁は製造されたといわれています。 私は勝手にAKを”赤き鋼帝”と呼ぶのに対し、FALを”西の怪銃”と呼んでいますが、 それほどまでFALは西側で成功した自動小銃の一つであると思っています。 次回は内部構造について触れようかなと思います。
by clan-aaa
| 2014-03-26 18:00
| 「小銃少女」
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Comments(2)
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by
mag
at 2014-03-28 06:30
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久しぶりに来たらまさかのFAL特集・・・・
FAL好きです!名前を知っている人自体は結構多い筈なんですが、国内ではいかんせん情報が少なく、なかなか主役になれないんですよね。 かく言う私自身も数年前までは世界のFALなどとはつゆ知らず、マイナーな銃好きなオレカッコいいだろ的な感じで威張っていました。 今後もFALの真実を取り上げてくれるIRAKAさんの様な人が増えていけば、私みたいに恥ずかしい思いをする人が減ると思います。応援しています。
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by
clan-aaa at 2014-04-03 08:34
>mag 様
コメントありがとうございます。 マイナーな銃のほうが惹かれるというのはありますよね。 FALは知れば知るほどバリバリの実力者だとわかるので 尚更魅力的なんですよね。 また来て下さい。
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